11日目/2011年2月2日(水)

【発信地】グアム・タモン(グランドプラザホテル)


 グアム一周ドライブを敢行した。
 7時半、ホテルのレストランで朝食を摂った。タダ券を使ったから出費はゼロだ。続けてホテルの駐車場に移動し、昨日借りたヤリスに乗り込む。練習の甲斐あって、左ハンドルに対する抵抗が少なくなった。その上よく晴れているから、きっと走りやすいだろう。
 8時10分、ホテルが軒を並べるタモンの14号線に入った。タモンは島の中西部に位置する。今日はここから北上し、時計回りに沿岸を走り抜ける予定だ。聞くところによると、4、5時間あれば可能らしい。遅くとも日没までには車を返却できるだろう。14号線から1号線に進入し、アクセルを踏み込む。広くて直線的な道路はいかにも外国らしい。気分爽快だが、なぜか違和感を拭えない。本来は1号線に入ってすぐ3号線に路線変更するはずなのに、曲がることなく走り続けている。車を停めて地図を参照すると、案の定間違っていた。このままでは3号線から離れる一方だ。慌ててタモンに戻る。グアムの交通標識は日本と比べて小さく、地名と道路名以外は"NORTH"とか"EAST"くらいしか書かれていない。また、道路の上ではなく横にあるから車線によって見やすさが異なる。
 8時50分、気を取り直してタモンを出発した。今度は無事に3号線を見つけ、ステアリングを左に傾けた。これから先も9号線、1号線、29号線、15号線、10号線、4号線、2号線、2a号線、1号線、14号線と車線を変え続ける。中継地点の大半はそのまま接続しているが、ちゃんと切り替えるべきポイントもある。ヒントはタダで手に入れたグアム全島地図だけだ。カーナビは付いていない。日本一周ドライブを思い出した。
 それにしても、グアムは郊外に出ると本当に何もない。沿道はだいたい海か森。米軍の施設がときどき見える程度だ。同じような景色がずっと続く。車はあまり通っていない。グアムで開発されているのは空港や多数のホテルを擁する中西部だけ、という話を聞いたことがある。その通りだと思う。我々が思い浮かべるグアムの風景は、全体のほんのわずかな部分に過ぎない。
 9時40分、15号線に乗った。米軍の施設が集まる北部から中東部に移動したことになる。サインボードを読むと、この地域はマンギラオと呼ぶらしい。地図上ではタモンの反対側に位置している。もう島を半周してしまった。さらに10号線、4号線と車線を乗り移って南下したところ、視界に「タロフォフォの滝」と日本語で書かれた看板が入ってきた。今日、立ち寄ろうと考えている場所だ。指示に従って幹線道路を離れ、脇道に入る。沿岸から内陸に向かう細い道だ。
 10時20分、タロフォフォの滝公園に着いた。目的は2つある。第一に園内の横井ケーブを見ること。元歩兵第38連隊伍長の横井庄一さんが28年間潜伏していた洞穴の複製だ。第二に併設の野外実弾射撃場で銃を撃つこと。すでに予約を入れており、11時に到着すると伝えている。そこで最初に公園へ足を踏み入れたわけだが、タロフォフォの滝と横井ケーブ以外に見所はあまりなかった。正直に言えば、タロフォフォの滝はケプロイの滝と比較すると規模が小さく、横井ケーブもレプリカだから迫力に欠ける。一方、射撃は予想以上に楽しかった。実弾を装填したのち、ずっしりとした銃を両手で構えて的やペットボトルに狙いを定める。ほとんど当たらなかったが、銃の重さ、そして実弾が飛び出る衝撃はしっかり感じ取った。映画などでよく見る、片手で敵を撃つシーンがどれほど現実離れしているか、今なら理解できる。
 11時40分、幹線道路に戻ってグアム一周ドライブを再開した。南部から見える太平洋は一段と美しく、眺めの良い場所を通るたびに車を停めて写真を撮った。スペイン統治時代の砦を再現したソレダット砦からの眺望は特におすすめだ。教会やマゼラン記念碑が建ち並ぶウマタックの入江は本当にきれいだった。
 13時10分、南部から中部に向かっていたところ、海側に太平洋戦争国立歴史公園が見えた。自分はその一角、ガアンポイントで車を降りることにした。太平洋戦争で日米が激戦を繰り広げた場所だ。修復された日本軍の高射砲などが置かれ、グアムが戦場だったことを物語っている。なお、ポンペイのソケースマウンテンにも日本軍の高射砲が残されているが、今回は天候上の都合により見学を断念した。戦跡を歩くのも自分がオセアニアに行く目的の一つだ。
 このころから少しずつ沿線が賑わってきた。遠くにはホテルが見える。ゴールは近い。1号線をひた走り、ピティからアサン、ハガニアを通り抜ける。そして14時10分、タモンに到着した。聞いていたとおり、寄り道を何度してもグアムは5時間で一周できる。うーむ、レンタルは6時間コースにすべきだったか。
 グアム一周ドライブを終えたあとはタモンの周辺をぶらぶらと走った。気になる場所に着いたら車を停めて散策。2時間ほどそれを繰り返した。恋人岬で景色を眺めている人を眺める。マイクロネシアモールのバーガーキングでタダ券を使用し、ワッパージュニアを頬張る。最後にセルフのガソリンスタンドで給油を行った。場所が違うだけで、やっていることは日本一周ドライブと同じだ。こういう旅が性に合う。
 16時半、ヤリスを返却してちょっと買い物。ある店で水を買ったのち、土産コーナーを覗いたところポンペイで手に入れたセイ農園特産黒胡椒を発見した。現地で買うと4.5ドルだが、グアムでは7.99ドルもする。やはりモノは直営店で買うべきだと実感した。
 明日は早朝の飛行機で日本に帰る。旅の終了が近い。