3日目/オーストラリア→バヌアツ

【現在地】バヌアツ・ポートビラ(City Lodge)/気温32℃


【訪問した国の数】2カ国


【フライト】計3回


【搭乗記録】
 2011年2月8日(火)/Virgin Blue シドニーブリスベン/DJ917 SYD-BNE
 B737-800/搭乗率8割/豪州人が大半。中国人も若干搭乗。
  7:45 搭乗開始
  8:15 離陸
 *ここからシドニーとの時差-1時間。シドニーが正午のときブリスベンは11時。日本は10時。
  8:40 着陸


 2011年2月8日(火)/Pacific Blue ブリスベンポートビラ/DJ181 BNE-VLI
 B737-800/搭乗率8割/ほとんど豪州人。
 10:10 搭乗開始
 10:40 離陸
 *ここからブリスベンとの時差+1時間。ブリスベンが正午のときポートビラは13時。日本は11時。
 14:05 着陸


 5時に起床し、シャワーを浴びた。もちろん他の宿泊者はまだ寝ている。起こさないよう照明は点けず、こっそり他の用意もして部屋を出た。6時にチェックアウトして駅へ急ぐ。


 6時半、Virgin Blueのチェックインカウンターで搭乗手続を行った。ちょうど出発の90分前。ギリギリで締切に間に合った。Virgin Blueはオーストラリアを代表する格安航空会社で、メルボルンアデレードなど国内の主要都市に就航している。今回はシドニーからブリスベンまで搭乗したあと、Pacific Blueに乗り換えてバヌアツのポートビラに向かう予定だ。Pacific Blueはオーストラリアと太平洋島嶼国を結ぶ系列の格安航空会社で、両社とも機体は真っ赤に塗装されている。


 8時45分、飛行機は定刻より15分以上遅れてブリスベンに到着した。乗り継ぎに多くの時間はない。さっそくターミナルを出て電車に乗り込んだ。この空港は国内線と国際線のターミナルが離れているため、移動にはAirtrainという電車を使う必要がある。なお、Virgin Blueでは搭乗手続の際にこの区間のタダ券を配布している。切符を買わなくて済むのだ。それは良かったのだが、肝心の電車が20分ほど遅延した影響でますます余裕がなくなってしまった。


 セキュリティチェックと出国審査を駆け足で通過し、10時ごろ搭乗口に到着。格安航空会社では原則として飲み物やスナックが有料だから本来は軽食を買うつもりだったが、今日はその余裕すら失っていた。本当に危ないところだった。


10時30分に入口を閉じた飛行機は現地時間14時10分、定刻通りポートビラに着陸した。おそらく乗客の大半はオーストラリアからの観光客と思われる。日本人がグアムに行くのと同じ感覚だろう。


 バヌアツでは乗合バスが格安でタクシーと似た役割を果たしている。ここはぜひ乗合バスでメインストリートに向かいたいが、なかなかチャンスに恵まれない。何台かターミナルに近付くだけで、こちらには全然来ないのだ。しばらく迷っていると30mほど離れた場所から声をかけられた。東洋人のおじさんが乗合バスの助手席に乗っている。「市街地へ行かれるならどうぞ」とアドバイスされた自分は、少々不安になりながらもワゴンに足を踏み入れた。実はこのおじさん、宣教師としてバヌアツに赴任している韓国人だった。2009年、サモア地震に遭ったとき一虬に繁華街から非難した男性も韓国人。オセアニアで困ったら韓国人に助けられるというジンクスが生まれた。さらに幸運は続いた。20分後、メインストリートに着いて財布を取り出したところ、「私が払っておきますからそのまま降りてもらって大丈夫ですよ」と笑顔で助言してくださったのだ。深々と頭を下げてお礼を申し上げた。心から感謝した。


 バヌアツの首都、ポートビラのメインストリートは端から端まで歩いても20分ほどだ。レストランもショップもこの一角に集中している。自分は観光案内所で情報を仕入れたあと、目星を付けていたホテル"City Lodge"にチェックインした。メインストリート沿いにあり、価格も比較的安い。なによりWiFiに無料でアクセスできるのが魅力だ。


 16時半、部屋に荷物を置いて再び外へ。24時間営業のマーケット、沿岸に設けられた公園などに立ち寄りつつメインストリートを歩いた。日本へ送る絵葉書を購入したほか、食事も終えた。そして18時、「フレンチの丘」に登って夕陽を眺めた。息を呑むほどの絶景だった。


 部屋に戻ってからはずっと体を休めた。しかし予定はこれで終わりではない。バヌアツ名物、カバを飲むというイベントをやり残している。カバとはヤンゴーナというコショウ科の木の根を潰して取り出した汁を水と混ぜたもので、バヌアツでは夜の嗜みとして愛飲されている。そのカバを提供するのがカバ・バーだ。多くは住宅街や裏通りなどの寂しい場所にあり、建物は木造でドアのない開放的な造りとなっている。目印は入口に置かれた赤や緑の電球で、バヌアツの男性は夜な夜なそこでカバを飲み交わすという。ポートビラではときどき女性も飲むそうだ。


 乗合バスの運転手から紹介されたカバ・バーは泊まっているホテルのすぐそばにあった。メインストリートから海側に向かった先の真っ暗な広場の片隅で、その社交場はひっそりと営業していた。怪しい。勇気を出して小屋に入ると、現地の男性が4、5人ほどたむろしていた。薄暗い室内で、ぼそぼそと小声で何かを話し合っている。周囲からの視線を感じつつ店員に100バツ(約90円)のコインを差し出し、「100バツぶんのカバをください」と注文する。事前に手に入れた情報では大抵のカバ・バーは分量ごとに値段を定めており、例えば50バツならS、100バツならM、200バツならLに相当するそうだ。


 店員は無言でバケツからカバを掬い取り、器に注ぐ。渡されたその飲み物は灰色に濁っており、決して美味しそうには見えなかった。匂いはそれほどきつくない。カバは一気飲みが流儀。自分は意を決し、ちびちびとした飲み方ではあるが休まず飲み干した。味は漢方系の胃腸薬に似ており、ほんのりとした苦みが口内に残る。客はカバを飲んだあと、ペッと唾を吐く。そしてカウンターに置かれた水で口をゆすぐ。なぜそこまでして、と思うがこれがバヌアツの伝統なのだ。オセアニアには他にも同じような習慣を持つ地域があるらしい。


 実はカバには鎮静作用がある。客が一様に落ち着いていたのはカバの効果なのだ。アルコールは一切含まれていないが、飲み方次第では足元がふらつく、意識を失うなどの反応が起きるという。自分は口が少しひりひりと痺れる程度だったが、疲れが増幅したような気もする。おそるべし、カバ。


 明日は郊外を散策して再びオーストラリアに戻る。最後までバヌアツを楽しみたい。